多面的に見る

 昔の私は、周りで起こったトラブルの原因を作ったのは、

「あなたでしょ!」

と言われることが多い少年でした。濡れ衣ともいいますか…。

 そう思われるような行動をとることが多かったので、仕方ないものと

言い聞かせていましたが…。

 

 このような判断は、「一面」しか見ていないからかもしれません。

最近、「多面的に物事を観る」ことが大切だと言われています。

 でも、多面的…って言われても何のことか分かりませんよね。

 

 学校の掲示物の中に、次のような物がありました。

「見方を変えるといいところいっぱい」という見出しです。

うるさい→伝えたいことがいっぱい

 のように見方を変える(リフレーミングする)と、自分や他人の「気付くことが多くなる」ということです。

 

 この題材をもとに、全校朝会でこんな話をしました。

「保健室の前に、見方を変えるといいところいっぱいって書いてあるけど、

校長先生が話す中に登場する人の、いいところ探してね。」

 

 子供たちは「うんうん」とうなずいています。

 

 

小学校5年生のクラスに、〇〇くんていう男の子がいてね、

その男の子は、とにかく暴れん坊で、人の話も聞かずに、好き勝手する男の子。

ここまでで、〇〇くんのいいところあった?

 

「最悪!!」

 

 ある日、理科室で実験していたら、〇〇くんが、いきなりとなりの女の子に

水をぶっかけたんだ。

「ひど!」

「うわ…。」

 

 いいところある?

「全然ないよ…。」

 

その女の子は、おとなしい子で、自分の思いもなかなか言えない子でさ。

水をかけた〇〇くんは職員室に連れていかれて、さんざん叱られた。

「なんてひどいことするんだ!!」ってね。

 

でも、この話には続きがあって、

水をかけられた女の子は、後になって〇〇くんにこう言ったんだ。

 

「ありがとう…。」って。

 

『ええええ!???』

『なんで!???』

 

さぁ、周りの人と相談してごらん。

 

 子供たちは一斉に考えを共有し始めました。

 では聞くよ。なぜ、「ありがとう」と言ったんだろう…。

 

「多分、その女の子は暑くて言えなかったから、水を掛けてくれてありがとう。だと思う。」

 

 このように、子供たちは、女の子の行動の理由を考え、発表しています。

自分の考えをもち、話に興味があれば自然と話をしたくなるものです。

 

「実はね…。」

この女の子は、「おしっこ」をもらしちゃったんだよ。

というと、数人が、「ああ!!!!!」

という、気付きの声を挙げました。

 

「もらしちゃったことを、周りの人にばれないように、

わざと水を掛けたんだ!」

「そうかぁ!!」

 

 でもさ、見方を変えていいところを見るって言っても、

結局は、見た目で判断されるってことじゃないの?

 

 と子供たちを揺さぶると、

一斉に、

「うううう~んん????」

とうなります。

 

これが大事なのです。

当たり前と思っていたことの視点を変えることで、思考することを始めるのです。

 

 校長先生がみんなに伝えたいのはね、

「どんなに善い行動にも悪い行動にも、そうする理由が必ずあるってこと。

見える結果だけを見てその理由を考えないで、勝手に決めつけて判断しないでほしいんだよ。

そうすれば、いろんな気付きが増えるはずですよ。」

 

物事を多面的に観ることの話は終了です。

 

 話は変わりますが、

子供たちの前で話すとき、子供が話にくらいついている「眼」をみると、

なんだかこちらまで力が入る思いです。

 

 子供たちに、こういう「眼」をさせる活動や授業を展開していきたいものです。