なんだか楽しかったなぁ…。

 今日、低学年の下校を見送った後、二階の窓から何気なく外を眺めていました。

 よく見てみると、数人の子が傘を差しながら駈けている様子が目に映りました。

数メートル走っては立ち止まり、下を眺めているのです。

虫でもいるのでしょうか。

三人が頭をくっつけて何やら指差しています。

 

そして数秒後、また駆け出します。

そしてまた立ち止まり、道端の植物に手を出しています。

そしてまた、走り出します。

 

子供の興味の移り変わりは早いですから、気になるものにはすぐに飛びついて、

すぐに飽きて、そして次の物に…。

 

その様子を見て、知らずのうちに微笑んでいる自分がいました。

子供の頃の自分を思い出し、

「登下校の途中にはたくさんの刺激があったな…。」

と…。

その分、トラブルもありましたが学んだこともたくさんありました。

 

過去に担任を持っていた頃、ある保護者の方が、

「先生! すいません。傘を息子に渡してもらえますか?」

と息を切らせて持ってきたことがありました。

もう20年以上も前の話です。

 

その後、しばらく経って久しぶりに再会したその保護者の方は、

その日の出来事についてこう話しました。

「木村先生との思い出は、傘を学校に持っていった時の先生の言葉です。」

『そうですか、私はなんて言ったんですか?』

 

「傘を忘れたのなら、濡れて帰ればいいんですよ。

 濡れて帰るのが嫌なら、次から天気のことを考えて、自分から傘を持つようになりますから…。」

 

言った本人が忘れていたことを、その保護者の方は話してくださいました。

そんなことを言う教員がいるのだと思ったのと同時に、

子供にその話をして、傘を忘れても親が届けないことにしたそうです。

 

不審者、熊対応、学校の統廃合など現代の環境は大きく様変わりし、子供の登下校事情も変化しています。

 ただ、そういう時代だからこそ、学校で子供たちに「何を学ばせ、何を気付かせるのか?」

と試されている気がしています。

 

 私は、放課後の3人の後姿を見て、

「気を付けて帰るんだよ。また明日な…。」

と見送りました。

すっかり雨もあがっています。

幼い頃の自分を見ているかのようでした。